雑誌で面白い記事を読んだ。
日本でも関西国際空港旅客ターミナルやエルメス銀座店を設計したイタリアの建築家レンゾ・ピアノの建築事務所、レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップには、いちばん奥に本当にワークショップ(工房)があり、モデリスタと呼ばれる木工職人が働いているという。彼らはレンゾ・ピアノ本人やアソシエートアーキテクト(共同設計者)から出されたアイディアを、それが実現可能かどうか、実際に木を削りモデルをつくる。細かなところは自身の職人的経験に照らし合わせて、構造上、無理のないよう仕上げていく。出来上がったモデルを前に、設計スタッフはさらに検討を重ねる。関西国際空港の建築部品のおさまりも、こうして検証されていったそうだ。また建築模型のみならず、建築部品の原寸モデルも作るし、施工まで手掛ける場合もあるそうだ。
レンゾ・ピアノが建築の設計同様に、モデリスタの手仕事を信頼し重視するのは、先代からの建設業を受け継いだ父カルロとの建設現場体験に根差しているのかも知れない。技術を持つ手への尊敬の念。 「ピアノはすべてコンピューターで設計していると思ったって?彼が仕事を始めた1965年にはコンピューターなんてなかったさ。」と父の代からピアノ家と働いて来た老練のモデリスタは笑った。 ーLIVING DESIGN Vol.18より一部抜粋
ナショナル・ジオグラフィックで見たフェラーリの工場もすごかった。レンゾ・ピアノも風洞設備を設計したその工場は、エンジン製造にも新鮮な空気と湿度が必要不可欠として見事に緑化され、中央には小さい森まである。大規模な天窓からの自然採光も素晴らしい。市販車でもロボット化されてるのは僅かに鋳造、合金加工と塗装行程のみで、あとはすべて手作業。フェラーリレッドのつなぎを身にまとった職人達が、自分達は世界最高の車を作っているんだという、まさに誇りをもって、何百というパーツを一つ一つ組み上げていた。中でもシート縫製エリアで多くの女性が手縫いをしている光景は印象的で、スタッフのおばさんの1人が、「私、街でフェラーリを見かけると、『そのシート私が縫ったの!』と声をかけるのよ」と言っていたのが、微笑ましかった。完成した市販車は、レース車兼用のサーキットと工場外の山道で実走テストされ、合格した跳ね馬は2ヶ月待った顧客のもとへと届けられる。時速300km超、3千万円の走る芸術品。イタリアは美と職人気質が高い次元で融合している気がする。
日本も技術大国であったはずだ。ようやく住宅にもエコポイント制度が導入され、省エネの高品質建材が身近になってきた。自国の技術力に自信と誇りをもち、目先のものだけに囚われないようにしたい。そして、私たちは知恵を使って美しく、チャーミングに限りある資源をシェアできるようにならなければならないと強く思う。